海外の訪問者が利用する企業ホームページには、構築後の管理が必要でした。石材メーカーS社のウェブサイト構築とクラウド移行を起点に、コンテンツ配信とウェブセキュリティ、継続的な運用をつなぎました。

企業ホームページは、公開する日にだけ使われる成果物ではありません。時間が経っても製品と会社を説明し、他の国から訪れた人にも必要な情報を届けなければなりません。

ところが、制作プロジェクトの終わりと運用の始まりは、しばしば切り離されます。画面は完成しても、サーバーは誰が管理するのか、海外からのアクセスが遅いときにどこを見るべきか、不正な要求が増えたら誰が対応するのかは、別の問いとして残ります。

海外アクセスの多い石材メーカーS社には、ホームページのリニューアルと既存ホスティング環境の移行が併せて必要でした。IXCは2020年から構築と運用を続けながら、これらの問いを同じ範囲で扱ってきました。

石材メーカーの製品紹介ホームページの画面
製品と企業情報を伝えるホームページの実際の画面。

デザインとホスティングを別々に変えるだけでは足りませんでした

S社の出発点には、海外での応答遅延と、オリジンサーバーへ届くトラフィックの増加がありました。正常な利用とともに、不正な要求も考慮する必要がありました。

この問題を単により大きなサーバーを選ぶことだけと捉えると、見落とす部分があります。どの要求をオリジンサーバーまで送るのか、繰り返し使われるコンテンツをどこから提供するのか、遮断してはならない訪問者は誰なのかを、併せて決めなければなりません。

ホームページの構築とクラウド移行を一緒に進めた理由を理解するには、画面と基盤環境を一つのシステムとして見る必要があります。訪問者が出会うページは、デザインの結果であると同時に、コンテンツ配信とサーバー運用の結果でもあるからです。

サーバーを移す作業には、移行の順序が必要でした

既存のホスティング環境はクラウドへ移行しました。移行順序を定め、リハーサルを経て、作業時間の中で切り替える方法で進めました。

移行で重要なのは、新しい環境にファイルが上がったという事実だけではありません。旧サイトで提供していた機能とコンテンツが、新しい環境でも引き継がれているかを確認する必要があります。作業を終えたあとの運用担当と点検基準も必要です。

移行計画は、こうした確認を作業の順序に変える手段です。何を先に準備し、どの時点で実際のサービスの経路を切り替えるのかを整理して初めて、移行の過程そのものが説明できる作業になります。

構築と移行を終えたあとは、監視、変更とパッチ、障害対応、セキュリティ点検を運用の範囲として続けました。

海外へのコンテンツ配信とオリジンサーバーの役割を分けました

海外での応答の問題にはCDNを適用しました。静的資源を分散した配信拠点から提供し、地域別の応答を見ながらキャッシュポリシーを調整しました。

CDNは、サイトの前に付けるだけの速度改善オプションと見る必要はありません。頻繁に要求されるコンテンツをオリジンサーバーが毎回直接提供しなくて済むよう、役割を分ける方法でもあります。

ただし、すべてのコンテンツを同じポリシーで保存しておくことが目標ではありません。更新される情報と、キャッシュできる資源の性質を区別する必要があります。速い配信と正しい内容の提供は、同時に満たすべき条件です。

この事例でも、サーバー移行とコンテンツ配信経路を別々の選択として置かず、ホームページ運用の一部として扱いました。

訪問者とCDN、WAF、オリジン環境の役割を示す概念図
コンテンツを届ける役割と、オリジン環境を守る役割を分けました。

セキュリティは遮断量より、正常な訪問者を守ることでした

不正な要求にはWAFを適用し、遮断記録を見ながらルールを調整しました。海外からの利用が必要なホームページである以上、正常な訪問を止めないことも併せて考慮する必要がありました。

遮断した要求が多いという事実だけで、良いセキュリティ運用だと判断することはできません。実際の顧客のアクセスまで止めていたなら、ホームページの役割を損なったことになります。逆にすべての要求を許可すれば、オリジン環境が不要な負担を抱えかねません。

したがってこの課題は、許可と遮断を一度決めて終わる仕事ではありません。要求の性質と遮断の結果を確認しながら、運用条件に合わせて調整し続ける仕事です。

コンテンツを速く届ける層と、攻撃性のある要求を除く層は役割が異なります。CDNとWAFを一緒に扱ったことは、一つの技術ですべての問題を解決しようとするアプローチとは区別されます。

長く運用するには、担当者の記憶の外に基準が必要です

時間が経てばサイトも変わり、担当者も代わることがあります。そのたびに以前の作業の理由を最初から探さなければならないなら、保守は次第に難しくなります。

S社の運用では、点検と対応の手順を運用文書に整理し、定期的にサービスの状態を確認しました。ホームページ、クラウド環境、コンテンツ配信とセキュリティルールを一緒に扱う構造です。

運用文書がすべての判断を肩代わりすることはできません。しかし、繰り返される作業の基準を共有し、担当者が代わっても何を確認すべきかを伝えるという意味があります。

このプロジェクトにおける長期運用は、単なる契約期間以上の話です。構築当時の選択を、その後の点検と変更へつないでいく作業でした。

ホームページの運用点検と対応状況を整理した文書
長期運用で繰り返される点検と対応の基準。

企業ホームページの完成は、公開後も続きます

この事例には、ホームページ構築、クラウド移行、CDN適用、WAF運用がつながっています。どれか一つの導入より重要なのは、各要素を実際のホームページの利用条件に合わせて扱い続ける構造です。

企業のウェブサイトを評価するとき、最初の画面と初期の制作費だけでは見えない部分があります。海外の利用者がどうアクセスするのか、次の変更を誰が反映するのか、問題が起きたら何を根拠に対応するのかも、ホームページの品質に含まれます。

S社の事例は、ウェブサイトを制作物として引き渡すことから、使い続けられる企業資産として管理することまでつなげたプロジェクトです。